2010年12月26日日曜日

茶道具と北欧


柳宗悦とWilhelm Kage。
「日用のものこそ美しく」という概念を海を隔てて共有しあった2人の出会い。ものへの愛情、かたちへの執心に国境がないことを示した偉大な瞬間。そのような背景もありながら、日本と北欧をつなぐ事象に現実的に触れる機会があるのは、とてもありがたいことです。

ギャラリーで長年にわたりお茶とお花の教室を開いていただいている先生からご提供いただいた1枚。以前お求め頂いた、Stig Lindberg [Silur] の筒型鉢を水指に見立てていただいたものです。
塗り蓋は既製のもので、たまたま家にあったものが示し合わせたようにぴったりあつらえることができたとか。まるで居場所が決まっていたかのような様子の画に、不思議なご縁を感じずにはいられません。

飯碗が井戸茶碗に、竹籠は花生に、紅容れは香合に。
四季とともに情緒の深い風情を歩んできた、道具を美しく見たてる知恵。日本人ならではの、翻訳もままならない「侘び寂び」に込められたものに想いをはせながら、北欧の道具に触れる。大切にしていきたい文化です。


2010年12月12日日曜日

Hertha Bengtson


 
Hertha Bengtson。スウェーデン陶芸の母と思しき彼女の功績と作品の数々の軌跡。彼女の作品集[Design]※1の記述から、器を中心に日用~使い手の景色に深く思いをこめていく、真摯な姿勢が伺えます。
極めて生産的でプレーンな器が台頭していく1900年半ば。合理性を礼賛し、かつての装飾美を振舞うことをさげすむ時勢に、あえて彼女は提案しました。
 
― 装飾は、ものの表層に命と高揚を与え、そのものの姿を決して失うことなく力強く現します ―
 
自然にインスピレーションの源泉を求め、"Fred(スウェーデン語で平和)"を愛する素朴で豊かな感性。生産性に貢献するための仕事としての頑なさとミニマリズム ― 狭間の苦悩で捻出された数々の発想から名作 [Bla Eld ※写真] は生まれました。
1941年に名窯Rorstrandに就いてから9年。戦後の混沌もままならない中における非常にエポックメイキングな陶磁器デザインを成立させたことによって、彼女の名を世に知らしめただけでなく、やがてスウェーデンはおろか世界中へノルディックデザインを牽引するほどの評価と成功を収めていくことになります。※2
 
― 新鮮さや調和を想い、個々時々の必要へ取り入れるという、使い手の喜びや楽しさが在り続けるようにすることが、私の仕事における目標です ―
 
陶芸への飽くなき探究心と遊び心。使い手への思いやり。そして自身を取り巻く仲間や環境への感謝の気持ち。半世紀を経てなお北欧のアイコンとも呼べる普遍性の創出とその成功も、彼女の人柄によって育まれたものだったのでしょう。
 
 
※1 参照資料 [Design : Hertha Bengtson] (出版社不詳)
※2 参照リンク www.designarkivet.se 80年代以降の主な賞歴その他詳細